運送は育成就労を待てません|自動車運送業だけが対象外になった理由と、免許という関門
育成就労の対象分野はおよそ17分野で、物流倉庫は含まれますが自動車運送業は含まれません。日本の運転免許(中型・大型・第二種等)の取得が業務遂行の前提となり、入国後3年の育成計画になじまないためです。したがって運送会社には「育成就労を待つ」という選択肢がなく、特定技能「自動車運送業」(2024年3月29日閣議決定で新設)が実質唯一の道になります。この分野はトラックで日本語能力試験N4相当と第一種運転免許、バス・タクシーでN3相当と第二種運転免許が必要で、受入企業には働きやすい職場認証制度の認証またはGマークが求められます。さらに2025年10月1日から外国免許切替が厳格化され、知識確認は10問70%から50問90%正解へ、技能確認にも課題が追加されました。
「うちも2027年の育成就労を待とうと思って」
運送会社からこの話が出たら、そこで一度止めてください。自動車運送業は、育成就労の対象に入っていません。
物流倉庫は入っている。運転は入っていない
育成就労の対象は、およそ17分野です。
介護/ビルクリーニング/リネンサプライ/工業製品製造業/建設/造船・舶用工業/自動車整備/宿泊/鉄道/農業/漁業/飲食料品製造業/外食業/林業/木材産業/物流倉庫/資源循環
物流倉庫は入っています。自動車運送業はありません。
理由ははっきりしています。日本の運転免許(中型・大型・第二種等)の取得が業務遂行の前提になるためです。中型も大型も、入国してすぐ取れるものではありません。3年で技能を育てるという育成就労の設計に、免許取得という別の関門が挟まると計画が成立しない——という整理です。
ここは実務にそのまま効きます。同じ会社のなかでも、倉庫内の荷役や仕分けは制度に乗り、トラックの運転は乗りません。自社の業務のうち、どこまでが倉庫でどこからが運転なのか。この線を引くところから始めてください。
つまり運送に「待つ」という選択肢はありません
建設であれば、今すぐなら特定技能、育てるなら2027年からの育成就労、という二択があります。育成就労を待つか、特定技能で今動くかに整理したとおりです。
運送にはこの二択がありません。特定技能「自動車運送業」が実質唯一の道です。2024年3月29日の閣議決定で新設された、まだ新しい分野になります。
要件はこうです。
- トラック:日本語能力試験N4相当以上+第一種運転免許
- バス・タクシー:N3相当以上+第二種運転免許
- 受入企業側:働きやすい職場認証制度の認証、またはGマーク(安全性優良事業所)
最後の1行を見落とさないでください。会社側に認証が要ります。認証もGマークも持っていない会社は、そこが最初の工程です。人を探す前の話になります。
2025年10月から、外免切替が別物になりました
そして最大の関門がここです。
母国で免許を持っている人を採る場合、外国免許切替(外免切替)の手続きが必要です。この手続きが2025年10月1日から大幅に厳格化されました。
| 改正前 | 改正後 | |
|---|---|---|
| 知識確認 | 10問中7問(70%) | 50問中45問(90%) |
| 出題形式 | イラスト・選択式 | 文章問題 |
技能確認にも、横断歩道の通過、踏切の通過、右左折時の合図と安全確認、一時停止、進路変更といった課題が追加されました。
さらに手続き面でも、国籍・在留資格・在留期間満了日・在留カード番号が記載された住民票の写しが必要になり、免許を取った国に通算3か月以上滞在していたことの確認も強化されています。永住者・特別永住者にも同じ基準が適用されます。
つまり——「母国で免許を持っているから大丈夫」という前提で採用を進めると、乗れないまま在籍する期間が生まれます。
判断は「乗れるまでの空白を、誰が持つか」
運送で外国人材を採るときの分岐は、結局ここに集約されます。
① すでに日本の免許を持っている人を採る 空白がないので早い。ただし対象者は限られ、条件の競争になります。
② 外免切替から面倒を見る 知識確認90%は、日本語の読解力がそのまま効きます。N4相当では文章問題50問は重い。日本語学習の支援とセットで考える必要があります。
③ 国内で一から免許を取らせる 費用も期間も最大。そのぶん自社に合わせて育てられます。
どれを選んでも、乗れるようになるまでの期間、その人にいくら払うのかという問題が残ります。ここを決めずに採用を始めると、本人も会社も苦しくなります。
そして運送は、転籍制限という仕組みがありません
建設の育成就労には転籍制限2年があります(そのかわり2年目の昇給義務が付きます。建設の転籍制限「2年」は、昇給とセットです)。
運送は育成就労の対象外なので、この仕組み自体がありません。特定技能は同一分野内での転職が本人の意思で可能です。免許取得の費用を会社が出した直後に移られても、制度上それを止める仕掛けはありません。
だから運送の場合、回収の設計は賃金の設計そのものになります。
ここで効いてくるのが、運送業に固有の賃金構造です。全日本トラック協会の調査では、男性運転者の月収404,100円のうち固定給が58.4%、変動給が41.6%。大型では変動給が47.1%に達します。2024年からの時間外労働の上限規制で、この変動給が構造的に削られていきます。
求人票に書いた金額に届かない——という事態が業界全体で起きやすい構造です。固定給で月給を作れる求人票に組み替えることが、採用と定着の両方に効きます。賃金規程の組み替えは社会保険労務士の業務ですので、当社が窓口となり中峯社労士事務所と連携して進めます。
まとめ
- 育成就労の対象に自動車運送業は入っていない(物流倉庫は入っている)。理由は日本の運転免許の取得が前提だから
- 運送に「2027年を待つ」選択肢はない。特定技能「自動車運送業」が実質唯一の道
- トラックはN4+第一種、バス・タクシーはN3+第二種。会社側に働きやすい職場認証またはGマークが必要
- 2025年10月1日から外免切替が厳格化。知識確認は50問中45問(90%)、技能確認にも課題追加
- 運送は転籍制限がない。免許費用の回収は、賃金設計で解くしかない
当社は人材のご紹介も派遣も行いません。ドライバーを送り込んで手数料をいただく立場ではないので、「今なら採れます」と急かす理由がありません。
まずは自社の業務のうち、どこまでが倉庫でどこからが運転かを切り分けるところから。そこが決まれば、取れる制度は自動的に決まります。外国人材の受入れ支援からご相談ください。
よくあるご質問
「うちの場合、費用と期間はどうなる?」
要件・費用・期間は、会社の状況で変わります。建設業許可やCCUS、月給制への切り替えを含めて、御社の現状から順番を整理します。ご相談は無料です。
相談だけで終わっても構いません。しつこい営業はしません。